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ダムめぐり/「ダムの水」を飲む/その3

「ダムの水」を飲む(その3)

とまあ、ここまで書いてきたのだが、「で、深透水ってなんなの」という方が居るかもしれないので、簡単にロックフィルダムの構造を説明してみる。

写真は昨年建設途中に見学させていただいた、奈良俣ダムと同じ中央遮水壁型ロックフィルダムという形式の岐阜県の徳山ダム(そういえば、これも水資源機構のダムだ)を左岸側から撮ったものである。奈良俣ダムを横にスライスして上を取るとこんなふうになっているとイメージしていただければ良いだろう。ちなみに向こう岸まで400m以上ある。大きさが理解していただけるであろうか。

奈良俣ダムを外から見たときには白い大きな石が積み重なっているだけのように見えるが、内部はこのように3種類の材料が縦に層状に重なった構造をしている。で、「中央遮水壁型」という名前の通り、中央に水を通しにくい材料(コア材)の層を設けて水をせき止め、それを石や砂(ロック材)で支える構造をしている。

ただ、水をよく通すロック材とコア材が直接接しているとコア材がだんだん水の中に流出してしまい(パイピングという)せっかく作ったダムが壊れてしまうので、ロック材とコア材の間にフィルタ材というロック材とコア材の中間くらい水を通すものを配置して、文字通りフィルタのようにコア材が流出しないようにしたり、ロック材がコア材を支えやすいようにしている。で、どんなものかと拡大した写真がこれ。まずは、コア材。

ご覧の通り粘土である。このコア材というのは数種類の材料を用意しておいて、毎日水分の含有量を測定しつつ、常に一定の値になるようにブレンドしてから使用しているとのこと。ダンプで何百杯みたいな巨大な構造物を作ってる裏で、こんな繊細で手間のかかることをやっているのはなんとも不思議な気分である。

で、これがロック材。ダムの堤体のすぐ上流で山を発破して作っていた。そのときの映像

で、最後にフィルタ材。ロック材より細かいけど粘土まではいかない。なお、ダムの材料の石や土は通常そのダムの建設現場の近くで調達するようになっている(コンクリートダムの場合はコンクリートを作るための工場を建設現場に作ったりする)。だから、奈良俣ダムの場合とこの徳山ダムの場合では使っている材料が異なると思うのでその点ご注意(ただ、異なる透水率の材料を層状に用いるということは変わらない)。

と、いうわけで、「奈良俣ダムの深透水」というのはこれらの層を潜り抜けて濾過された水な訳で文字通りダムの水なのです。なお、これならほかのロックフィルダムでも飲めるんじゃないかという気がしてくるが、その点は調べてみないとなんともいえないし、今後の課題とのこと。だから山の中でロックフィルダム見つけたからって浮かれてむやみに飲まないほうが良いと思う。でも遭難したときに覚えておけば…、と思ったがダムの管理所に素直に助けを求めるべきだ。

おまけ